リアル沢木
バラナシに着いてすぐ、
ガートは全部水に埋まってるって聞いて残念に思いながら、
さっそくベンガリートラを散歩していたら、
「どこ行くの?」とインド人に話しかけられた。
無視しようかな、と思っていたら、
さらに後ろから「この人そんなに怪しい人じゃないですよ」と日本語が。
日本人の青年だった。
学生でそのインド人とぶらぶら歩いてるらしい。
ガートってぼーっとすることができない今、
裏道を散策するほかバラナシではやることがないので、
なんとなく流れでその3人で火葬場まで行った。
学生は
「昨日もここに来たんですけど、火葬場って知らなくて、来てみていきなり死体が焼かれてるとこみて衝撃的でしたー」
その学生は、今回のインドが初めての海外旅行で、現金15万円を握りしめ、初日にデリーの五つ星ホテルを予約した以外は、なんのあてもなくやってきたそうだ。そして、デリーの空港を出てタクシーでホテルまで行くはずが、それがぼったくりタクシーで、そのままホテルではなくぼったくり旅行代理店に連行され、勝手に旅程を組まれ、ホテル移動費など13万円を支払ったそうだ。
私とあった頃はもう旅の終わりだったけど、初めての海外で何が起こったかよーわからず、現金2万円でこのまま帰れるのか?と不安でしかたなかったそうだ。
地球の歩き方に載っているお手本のようなぼったくられよう。
「そんなに怪しい人じゃないですよ」と言っているけど、まだ懲りてないのかな、、、
インドに関してほとんど予備知識なかったみたいで、バラナシに来たのもぼったくり代理店の旅程に組まれていただけ。
でも、ぼーっと歩いてて突然火葬場に出くわすくだりは、まるで深夜特急の沢木耕太郎のよう。
「深夜特急って知ってます?」とその学生に聞いたら、やっぱり知らなかった。
(一緒にいたインド人は知ってた、ムケさんと知り合いだったしね)
次の日ゲストハウスにいた学生の女の子とご飯を食べにいった。
その子はインド旅行は「既成の概念をとっぱらう何かがインドにはあるはず」ということで、旅行先をインドに決め、出発前にはなんらかの予防接種を受け、生野菜は絶対に食べない、など事前準備、情報収拾に余念がない。
その子とも別の火葬場に行ったけど、ひたすら死体が運ばれてきては焼かれる工程をみてる様が印象に残っている。かなりの近距離で炎の熱さで顔が焼かれそうなくらいだったけど、私たちは1時間以上はその場に立っていたと思う。
旅のテーマとか目的とかしっかり決めてる子もいれば、なんも考えてないバカの子もいて、今時の若者はと一括りにはできんなーと思いつつ、
客観的に見れば、しっかりものの女の子の方であるべきなんだろうけど、やっぱりなんも考えてないバカの子のリアル深夜特急な感動が旅だよな、と思ってしまう。
これがなかなか難しいんだけどね。
しっかり女の子の方に前日に会ったぼったくられアホ学生の話したら、信じられないくらいアホですねと言ってたわりに、会ってみたかったなーとも言っていた。
旅の出会いに協力できなかったのが少しの心残り。